母なる音を聞きながら no.1
地球規模の気候危機を前にして、次世代エネルギーが重要な問題となっています。当会も化石燃料や原発からの代替エネルギー資源として再エネは推進されるべきと考えています。ただし、現在の再エネ政策には「社会的不公正さ」、「市場主導型」「自然破壊」の3つの大きな問題点があると考えます。「自然破壊」については、本サイトの署名ページなどでも触れていますので、ここでは2つの問題点に触れます。
現在の再エネ施策の問題の1つ目は「社会的不公正さ」です。再エネ推進と開発が、地方やグローバルサウスの自然・人々に負担と犠牲を強いて、さまざまな格差をもたらしています。メガソーラーや巨大風力発電のような大規模な開発事業ができる地域は、自然豊かな地域に限定されます。地方の豊かな自然を破壊して作られる再エネ電力が大企業の利益になったり、都市部の過剰な「豊かさ」を支えているのが現状です。これからの日本の再エネを考えるときには、小規模分散自律型で、自然改変の極めて少ない、地域にとって持続可能な形が、市民営によって市民が主体的に管理できる形が理想だと考えます。
問題点の2つ目は、「市場主導型」の弊害です。地球規模の気候変動(危機)の解決の一つとして、世界中の国が再エネこそが、解決の道だと進めているようです。そのために、市場原理を導入し投資を促進しています。本来、脱炭素を目指すという目的が、市場介入による過剰な環境ビジネスへと変質し、企業価値と利益を優先するあまり、自然保全・住民の安全と理解を蔑ろにしている企業もあります。現在のような再エネの市場主導型解決策には、根本的な見直しが必要になってきていると思います。
国内外で再エネが増えても電力消費量は減るどころか、むしろ増えています。いくら再エネが増えても電力需要が増加し続ければ、再エネ設備に必要な資源を自然から収奪し、豊かな自然そのものを破壊し生物多様性を損ない続けることになります。再エネを利用した電力を使用し脱炭素に貢献しているということが、自然破壊や地域住民の安全安心を奪っているということの免罪符になっているかのようです。まさにグリーンウォッシュです。
だからこそ、過剰な電力を利用している都市部や企業は、先ずは電力需要を軽減・削減する努力が最優先されるべきと思います。同時に人々の暮らしもシンプルなものに移行することで、エネルギー需要を低下させてゆく必要があると思います。際限のない経済成長神話を求め続けることは、結果的に人類の存亡にかかわると考えます。
このような社会的不公正や自然破壊・市場主導型で行われている再エネがうみだす「豊かさ」を、本当の豊かさと言えるのでしょうか。
1960年代に環境問題を告発したアメリカの生物学者レイチェル・カーソンは、大人になると見失っていく「センス・オブ・ワンダー」(驚きや神秘さに開かれた感受性)を新鮮に保つことの大切さを教えています。それが失われている現代社会に対して、最後は人間まで汚染されると警告していました。それが、今現実のものとなっています。
私たちは、自らに問わなければなりません。これまでのような「豊かさ」を求め続けるのか?
「本当の豊かさとは何か?」を・・・・・
2024.6.24
松本まり子