気仙沼市民の森風力発電所 見学と学習会

2024年7月28日(日) 

気仙沼の風力発電所既設4基と周辺地域を見学しながら、今回の風発計画地を確認しました。再エネ事情と風発に詳しい地元の既存風車「市民の森風力発電所」の社長が案内と説明役をしてくださり、実際に風車を建てた経験と知見に基づいた、くわしいお話を聞くことができました。

参加者は、「気仙沼の森と海を守る会」の会員、周辺自治会から総勢16名。車で乗り合わせ林道をゆっくり走り、途中各ポイント地点で説明を受けました。途中ポイントで降り立った場所は、豊かな森におおわれた場所で、修景池には蓮の花が咲いていました。このような場所に巨大風車を建てるのかと想像すると、大きな悲しみと憤りを感じました。

以下は見学レポートと説明の要約

・巨大風車を建設するには、基礎杭(くい)が必要なため建設地のボウリング調査をするが、杭の本数や何mの基礎杭にするかはボウリングの調査結果と建設する風車本体から算出される。

既存の風車の基礎杭は、岩盤に届くまで、1基当たり8本・直径2m、最長箇所で28mある。

・既存の風車は、騒音や景観を考慮し、1.4㎞の区間に4基と風車どうし

の間隔をとり、さらに尾根筋から下がった場所を選定して建設した。

東急不動産による計画では、約1.8㎞の区間に10基と間隔をどのように計画されているのか疑問で、環境への影響や騒音が懸念される。

・一般論として、風車の建設地選定にあたり風況観測塔を建て風の調査を することがいちばん最初に求められる。風力発電所建設の可能性調査とは隣に風力発電所が存在することではない。

東急不動産の風況観測塔完成は2024年3月と遅く、計画自体があまりにも雑で、本来地域住民への計画発表も、少なくとも風況調査が終了し、風況に問題がないことを確認されたのちに実施されるべきもの。

発表された工程表は、どの程度練られたものか疑問で、乱暴すぎるのではないか。

・風車は風速35m以上の強風や落雷のときは、事故防止のために自動停止する。

・東急不動産は、現在全国7カ所に巨大再エネ施設の計画を一斉に進めている、今計画はFIT制度(固定価格買い取り制度、再エネで発電した電力を、東北電力が固定価格で買い取ってくれるので安定した経営ができる)FIT終了前の最終の入札である。

・宮城県は、大規模森林開発を抑制し、平地などの適地へ事業者を誘導する目的で、再生可能エネルギー地域共生促進税を導入した。適地ではない場所(例えば保全したい自然林など)への事業に高額の税金を課し、事業者や企業の参入をけん制する目的がある。地域地理事情から見れば、今回の事業者の計画予定地域は「巨大風発を建てる適地ではない」のだが、市当局並び宮城県がどのような判断をするかに注目しなければならない。

・「RE100(再生可能エネルギー100%)」とは、自社の事業で利用する電力を100%再エネにすることを掲げる企業が参加する枠組みだ。東急はRE

100を達成・加盟したことをアピールし、企業価値を高めることを目指しているのだろう(しかし実際は、地方の自然にどんな負荷と影響を与えているのかを見ていかなければならない)。

・カーボンニュートラルを目指し、宮城県は風力発電の可能地や候補地を「ゾーニングマップ」として公表したが、市民や各地域住民からの批判を受けマップを非公開にした。今回の計画予定地は、そのゾーニングマップにも示されていた地域だ。

・事業者は、今計画を10基にするのか8基に減らすのか発表していないが

基数を減らした分、1基のサイズをより大きくして発電規模(総電力量)を

変えたくないのでは。

・今回計画で示されている2種類の風車機種のうち、ブレード直径158mタイプは、全高が既存風車サイズの約1.5倍の大きさであるだけでなく、本来は洋上風力用の機種と推察される。実際に回転すれば、地上20mの高さで地面近くをブレード先端が回転することになるので相当危険である(既存の風車は地上38m)。

・既設4基は、近隣地域への騒音影響が出ないように、回転部にギヤがないドイツ製の発電機を採用した。しかし、今計画の予定機種は、ギヤがあるタイプなので、ブレードの風切音のほかに騒音影響が加わることが懸念される。

・山の尾根を広範囲に改変してしまえば、土壌の保水能力が低下することが懸念される。現地は花崗岩質が風化した通称「マサ土」と言われる滑りやすい地質である。

・今回の風発計画地は、かなり急峻な地形で、県内でも最大規模の砂防指定地・土砂災害危険地域・山地災害危険地域が重複指定されていることを軽く見てはいけない。

・たとえば1基について約1町歩の土地を改変する規模になるだろう。

10基で10町歩、つまり10haの自然と山の改変が行われることになる。

それ以外にも搬入路も改変が必要だ。その改変の規模がどれほどの規模になるのかは想像できない。

大規模な開発を伴う事業、ましてや、先人から受け継いだふるさとの自然

に手を加えるという事業だから、慎重な取り扱いが必要で、住民の合意なくして進めるべきではないと考える。