自然は「いのち」そのもの S.O.P (Save Our Planet)

2023年6月に発足した市民グループ「気仙沼の森と海を守る会」は、2024年12月に市民の森に計画されている巨大風力発電事業中止の要望書と8529筆の署名を市長に提出しました。会の発足当時、巨大な風力発電事業が市民の森に計画されていることは、市民に十分に周知されておらず、情報提供や学習会、署名を中心に活動してきました。学習会と署名活動を通して、この事業計画に対する関心が広がり、さらに懸念を持つ市民が増えました。

現在、全国ではメガソーラーや巨大風発の再生可能エネルギー(以下再エネ)の導入が推進されている地域で、生態系破壊と地域住民の暮らしへの影響等の問題から、各地域の住民が懸念や反対の声をあげています。しかしながら、この地元では当初「再エネだからいいんじゃない」「原発よりいいよ」「気候変動に貢献できるから」「お金が入るならいいんじゃない」という声も聞かれました。しかし、本当にそうでしょうか。

世界の政治経済学問の指導者を集めた世界経済フォーラム(WEF)のグローバルリスク報告書2024年では、今後10年間のリスクの影響度(深刻さ)のランキングで、1位異常気象(短期的気象変化)、2位気候変動の激化(長期的な気象パターンの変化)、3位生物多様性の喪失と生態系の崩壊、4位天然資源の不足、の危険度が高いとされています。

また、生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学‐政策プラットフォームであるイプベス(IPBES)は、2024年12月に報告書を出し、大切な視点と方向性を示しました。そこには、気候変動という一つの危機に特化した解決策 (この場合は再エネ推進)が、他のワールドリスク(世界的危機)をむしろ悪化させかねない相互連関があることを明らかにしています。つまり、気候変動対策⇒行き過ぎた再エネ開発⇒生態系破壊・生物多様性の喪失⇒気候危機のさらなる激化という悪循環を招きかねないということです。当初の気候変動対策という目的とは逆の結果を生じさせることになります。気候変動対策という一つの課題を優先させる取り組みが、他の状況を悪化させる「トレード・オフ」を引き起こすということです。巨大風車群やメガソーラーなどの再エネ発電施設は脱炭素には貢献するとしても、立地状況によって地域社会や自然環境に負の影響を与える場合があることが、世界150カ国加盟の数千人の科学者による解析で示されたのです。さらにIPBESでは生物多様性の損失の根底にある要因として①自然と人間の乖離②権力と富の集中③短期的、個人的な物質的利益を優先させてきたという3つをあげています。

生物種の絶滅は、年間4万種に上り私たちの地球は悲鳴を上げています。気候変動・生物多様性の損失・環境汚染の影響をまともに受ける世代は今の子供たちと数世代先の子孫にまで及びます。「世代間倫理」という考え方は、今の現役世代だけの利益や都合だけでなく、過去の先人たちが築いてきた価値を守り、また将来世代に対する責任として考えるという思想です。人間は自然を単に物質的な「それ・もの・IT」としてとらえ、自然を支配し消費できると勘違いしてきました。しかし、自然は「いのち」そのものです。私たちは大きな変革の時期に生きています。そして人類全体が喫緊の選択に迫られています。地球を救うには、今いる私たちの足元から始める必要があります。私たちは、現在計画されている市民の森での巨大風力発電事業計画がもたらす、未来の気仙沼への影響を各自が自分事として、そして将来世代への責務として真摯に考えることが大切だと思います。私たちが、気仙沼の未来に継承すべきものは何でしょうか。               気仙沼の森と海を守る会 代表 松本まり子