当会設立の経緯

当団体は2023年6月に発足いたしました市民団体です。地元に計画されている東急不動産の風力発電事業に対して、問題提起として三陸新報に投稿した記事(松本)がきっかけで、それを読んだ市民の方から「この問題について考えてみる必要があるのではないか」という声や反響が届きました。その後、関心を持った市民が集まり学習会や協議を重ね、10名に満たない会員で発足いたしました。

当会はいかなる政治・宗教・党派等とは一切関係なく、市民の自発的な参加に基づき活動をする団体です。

「東急不動産による気仙沼での風力発電に思う」

「真の文明は山を荒らさず、川を荒らさず、村を破らず、人を殺さざるべし」(田中正造)

現在、全国の各地方の山地や沿岸部に多数の陸上・洋上風力発電所の計画・建設が進められ、多数の大企業が「脱炭素に貢献する」を大義に、地方の自然を獲得し「環境事業」の名の下に実質は環境破壊を進めている。これに対し、宮城県でも蔵王連峰で関西電力が風力発電事業を計画していたが、厳しい批判を浴びて計画を撤回した。また、八森山周辺加美町・色麻町、六角牧場栗原市・大崎市、丸森町、鳴子温泉郷周辺での風力発電計画に住民らの反対運動ドミノが起きている。さらに全国各地及び風力発電本場の欧州でも風力発電の環境破壊に対して反対運動が起きている。

東急不動産による風力発電事業計画の説明会が3月にあり参加した。設置予定範囲は71.5ha東京ドーム15個分、ブレード羽の回転域の高さは最大180m34階建てビルに相当の巨大風車10基を予定しているという。温暖化と気候危機を止めるため、脱炭素型社会への転換、再生可能エネルギー(以下再エネと略称)化を推進することを、宮城県も気仙沼市も基本方針としていて、その方向性に異論はない。しかし、「脱炭素・再エネ推進」のために、十分な熟議や住民の合意のないままに、大企業が各地方の自然をどんどん破壊して巨大風車を建設することが、「環境に優しい」と言えるのか。

今回の計画予定地は市が造成に関わった県立自然公園内の市民の憩いの場「市民の森」だ。説明会参加者からは「事業計画区域と市民の森がすっかり被さっているのはなぜか」と強い憤りも出された。この地域には、1300年の歴史を持つ「羽田神社」の本殿と奥の院が鎮座する。境内には県の天然記念物に登録される樹齢1000年を超えるスギ「太郎坊・次郎坊」2本の巨木がそびえる。旧暦8月に行われる「おやまがけ」は国の重要無形文化財に登録されている。

また、5、6月には隣接する山域に地元の方々が長年にわたり保護育成してきた「徳仙丈山のヤマツツジ」の大群生観光資産が山を真っ赤に染める。そのツツジの北側には気仙沼市最高峰の「大森山」がそびえる。そして、これらの山系の東に「市民の森」が続くのである。また、近年の降雨量増大や頻発している地震による土砂災害危険個所、地滑り地形とされている。もし、巨大な風力発電施設ができた場合、地元の自然・文化・社会に多大な影響を及ぼすことを懸念している。

風力発電は二酸化炭素(CO2を排出しない「クリーンな再エネ発電」というスローガンで、国と企業は風力発電を推し進めている。本来風力発電は広大な低地と安定した風況の場所を必要とするが、日本は国土の75%が山地であり、そもそも風力発電には適していない。平地が少ないため洋上か山上かに設置することになるが、山上に建設するには山を削り、森林を伐採し整地しなければならない。さらに巨大風車を搬入するため幅6mの道路も造るが、これは、CO2を吸収して固定してくれる森林と自然の働きを破壊する行為である。さらに、落雷事故、バードストライク、動植物の絶滅、騒音・低周波問題、土砂崩れや倒壊など、全国の既設風力発電所からは様々なトラブルや問題が発生している。

また、風力発電設備の耐用年数は約耐用年数は約20年と短い。経年劣化した発電施設の管理の困難さは、原発問題でも私たち年と短い。経年劣化した発電施設の管理の困難さは、原発問題でも私たちの知るところである。の知るところである。これらの諸問題があるにもかかわらず「クリーンで環境に優しい」これらの諸問題があるにもかかわらず「クリーンで環境に優しい」「地「地域共存・共生」域共存・共生」と呼ぶのは詭弁だと思う。と呼ぶのは詭弁だと思う。

また、今計画の気仙沼風力発電でつくる供給電力は2万世帯分としている(東急発表)が、「発電された電力は東北電力の上位送電網を通り、都市圏や関東に送電される」(説明会での質問への担当社員の答弁)とのことだ。莫大な電力を消費しCO2の多くを排出する都市圏や巨大商業施設等のために、地方の自然を犠牲にしていいのか。気候危機が、物質的豊かさと富を求め、世界中の自然環境を破壊し収奪してきた結果であるとすれば、脱炭素・再エネの名目で山・川・海を破壊してゆくことは、「再生可能エネルギー」のために自然環境を「再生不能」に荒らしてしまうという根本矛盾と言わざるを得ない。

「どんなことも7世代先まで考えて決めねばならない。」(ネイティブ・アメリカン)私たちは、何を将来世代に残すべきなのだろう。

松本まり子(松崎萱)

気仙沼の森と海を守る会  会則

海の恵みと豊かさは、豊かな森・山からの賜物であり気仙沼の生業の源である。海の豊かさを守るには山と森林の適切な管理と保全が必要である。人間の未来の存続は、健全な自然環境が保たれることにかかっている。地方の豊かな自然を乱開発し、地域住民の生存権を侵害し一部の地域や人々を犠牲にするような不公正・不均衡な事業や施策を憂慮する。

気仙沼市環境基本条例には次のようにある。「私たちは、自然の美しさや豊かさからあふれる恵みに感謝しながら、環境に配慮した生活や事業活動を進め、人と自然が共に生き続けることができる社会を創造し、その環境を守り育てる責任と義務を担い、次の世代に引き継いでいく使命を持っています。」この条例の理念を継承し、当会は生態系の保全、人間と自然界との繋がりの回復、コモンズ(社会的共有財)の拡大、公正公平な社会のあり方、数世代先を見越した地域環境と生活について市民が共に考え、必要な活動を行ってゆくことを目的とする。

気仙沼市環境基本条例